生きる勇気

Dsc00613_2 ある日、本好きの友人から一冊の美しい本

を借りた。私がサロンに絵本を並べている

のをみて、こういう本もあるからと、お気に

入りの一冊を持って来てくれたのだ。

ことわっておくと、私は決して読書家ではな

い。(ことわるまでもないか)。毎日大量に

目にする活字は、その殆どが仕事に関する

情報なので、所謂読書というには程遠い。

確かに、好きな仕事に関する本などを読む

のは実に楽しく、得るものも仕事に直結して直接的。毎日、時間も無いからと

特に楽しむための読書は諦めていたけれど、この本を読んでそれは間違いだ

と悟った。この本は、私に生きる勇気を運んでくれた。

タイトルは“つなみ”、原題「THE BIG WAVE」。作者は、パール・S・バック。

アメリカに生まれ、宣教師の両親に連れられて生後三ヶ月で中国に渡り大学生

活以外は長年中国で生活した作者。それ故に深く中国の生活感情を理解し南

京大学で英文学を教えたりもしていた。日本にも滞在した経験があり、その時

の経験をもとに書かれたのがこの“つなみだ”。

舞台は日本。ある夏、浜辺の漁村に津波がやって来て、村の建物や住んでい

る人々、大切な家族を流し奪い去ってしまった。家族の中でたった一人残され

てしまった少年。それを暖かく見守る友人の少年とその家族。やがて、周囲の

暖かく大きな愛情に見守られながら逞しく成長した少年は、家族を失った浜辺

に自分の家を建てる。

過酷な自然の前では無力な人間。だが、何度も大切なものを奪われながらも、

危険や死を恐れずありのままに受け入れて、その土地を離れない生き方は、

忘れかけていた日本人の生きる勇気を示してくれたように思う。それは、簡素

で武骨で非合理的だけれど、不思議な力強さに溢れている。

また、見守る少年の父親が子供たちの問いに答える言葉のひとつひとつに、

逞しく生きていくための大切な哲学があって、私はとても納得した。

西洋と東洋という、異なる文化を肌で体験した作者は、恐らく妙な偏見はもっ

ていないのだろう。驚くほど自然で優しく、また鋭く日本人を描いている。

挿絵は、黒井健さん。絵本の“ごんぎつね”や“手ぶくろを買いに”の絵はあま

りにも有名。美しく優しい絵を描く方で、私の好きな作家の一人。

興味がわいた人は読んでみて欲しい。感じ方は人それぞれだから、保証はい

たしませんが[E:coldsweats01]

たくさんの良い作品に出合って、自分の心の琴線に触れるものを見つけたら、

きっと生きる勇気が湧いてくるはず

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